2013年10月法話

10月、秋晴れの続く秋となりました。稲刈りの真っ最中、黄色の稲穂の絨毯があっという間になくなります。機械作業の世の中になり、人間の働く様を見る機会が少なくなっていますが、汗を流しての作業は大変なことと思います。良い出来にほっとしているのではないでしょうか。ただ豊作になると値が下がるようで、中々農家の方も満面の笑顔とはいかないようです。台風の被害で水につかった田んぼもありましたが、大きな作への影響が無くほっとしています。

ここにきて消費税が上がるとのこと、世間にどのような影響があるのでしょうか。駆け込みでの消費もあるようですが、日常はそうはいかず、政治家・専門家の思うような良い流れで日本経済が進むのかどうか、一つの決断でしょう。やってみなければ分からないのは怖いですが、お金の流れがよい方向に向かいますように。

「エンマ様大集合」なる企画が4日から6日まで能代市文化会館で開かれます。エンマ様、奪衣婆など40体、地獄極楽図など30軸以上、なかなか壮観な空間が出現することと思います。現代社会への警鐘と人間としての生活基盤の確立に寄与出来れば幸いです。おじいちゃん、おばあちゃんから子へ孫へ受け継がれてきたものが、現代は滞り気味です。この企画がそれらの一助になれるものと思います。すべての世代の方々がどのように受け止めてくれるのか、間違いの無いように伝えていければと思います。

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さて、師の作品に「挙杯邀明月」の一幅があります。「杯を挙げて明月を迎える」秋を代表するような詩の中の一節です。中秋の名月、十五夜にぴったりの言です。ススキを飾りお団子をお供えして手を合わせる、日本人のすべてのものを慈しみ、今あることに感謝の心を表したものでしょうか。ちょうど次男の結婚式も同時期、この一幅を床の間に掲げ、日本人の心として様々な盃をあげさせて頂きました。

日本人の感覚は誠に豊かで奥ゆかしく、いつまでもいつまでも崩したくないものです。先日東京であるお寿司屋さんに入りました。そこに外国の男性がお一人入ってきて、「私、オスシ食べます。ワン・まぐろ、ツー・サーモン、スリー・イカ、あとお酒、、、あとフォー・うなぎ」という注文でした。板前のおじいさんがOK,OKといって一貫のマグロ、二貫のサーモン、三貫のイカ、四貫のウナギ(あなご)、そして二合の冷酒を出しました。板さんも江戸っ子、早い早い。一皿ずつ出るのですが、食べるのも早く、あやしい箸使いでパクッパクッ、全部食べ終わるのに五分とかからず、お酒は食べる前と後に二回に分け、水の如くでした。ああ英語が話せたら、ゆっくりと一つ一つ味わいながら季節の話などしながら、一時間くらいかけて食べたらなぁと思いながら、眺めることしかできませんでした。外人さんも寿司ブームのようですが、食べればいいというものでもない気がします。

書の一幅ですが、師の引き締まった線と字形で一つの揺るぎもない作です。特に月の字は、まともじゃないのですが様になっています。「明月」と月が二つ続くことによる工夫でしょうか。いとも簡単にひねってしまう力量には心惹かれるものがあります。