2012年12月法話

本年もあと残すところ1ヶ月、師走となりました。

11月は雨が続きましたが雪に変わり、寒さが増してきています。この時期、冬支度も万端でなく、身も寒さに慣れず、その日その日の天候に左右されてしまいます。昨年は初雪がそのまま根雪となってしまいましたが、本年はどうなる事やら、夏の猛暑の影響が冬にもあるのか心配です。師走になってどの家庭も一年の総仕上げで忙しくなることと思います。

お寺も年末の寺務があり、これから1ヶ月かけて来年の準備となります。本年は長男と次男の二人がいますので、私の負担も少なくなると思いますが、どうしても私も目を通しておかねばならず、忙しさは同じかも?

12月になると当地を経てゆく渡り鳥も南の越冬に飛び立ってしまいます。あと3、4日くらいでしょうか。近くの小友沼には多くの白鳥、数万羽の雁が休んでいて、賑やかな鳴き声がしています。これも当地の冬の風物詩となっています。

そんな様子の漢詩があります。いわゆる禅句として詠まれたのでしょう。「林間録」に出てきます。

雁過長空 影沈寒水 雁無遺跪意 水無沈影心

写真は師・黙窓が求めに応じて書いたものです。半切4枚、4曲半双の屏風です。まさに雁が飛び出していく姿を目の当たりにしての詩でしょうか。雁が飛ぶV字があちらの空から頭上を越えていくとき、まさにその影は寒さが増した水面に映っている。雁には水面に跡を残そうという意はなく、水にも雁を映してやろうとする心は存在しない。ただそこに具現するものを看過するしかない。その光景のなんと美しいやら、自然に打ち勝とうとする人間の心の狭さが、あたかも水に映る月をカッパが取ろうと水に入る姿に似ているような気がします。物事に執着しない心を持ちたいものです。

そんな詩を師は半切4枚に隷書で丁寧に一字一字を置くように書いています。亡くなる前年の作品のようで、若い時期の堅い迫力のある隷書ではなく、何となく柔らかさのある線で、とくに誇張するところもなく、まさに沈着冷静な隷書となっています。いつまで見ていてもイヤミのなく飽きのこない作品になっていると思います。

これから一年の総まとめ、冬囲い、境内の掃除と堂内の大掃除を済ませ、今年一年の垢をすっかり落とし、すがすがしい新年を迎えることが出来るように務めたいと思います。
皆様にとりましても本年以上の良き年を迎えられますことをご祈念申し上げます。