2008年12月法話


12月、今年もあと一ヶ月です。早いものですね。先月20日過ぎからの冬型の天気も少しは穏やかになりましたが、いつもより早い冬将軍に身も心も整えるのに間に合わないという状況です。境内の木々も葉を落としていますが、ケヤキがやや早く、イチョウと柳が遅いようです。そのイチョウですが、初雪があった後、どう思ったのか木の心の具合はわかりませんが、突如一斉に葉を落としました。まさに大雨のごとく次から次へと降るような勢いでした。実も一緒に落ち、たちまち下は黄色の海となりました。実にすばらしい光景でした。木も葉を落とす時期は自然に任せ、その時を逃さずに実行しているのでしょうか。その後の掃除中思うことでした。その横ではあの独特のにおいの実を愛犬ランチがむしゃむしゃ食べています。掃除のお手伝いのつもりでしょうか。私が手を休めると食べるのも休めます。そんな人犬一体に疲れも感じず楽しんで終えることができました。

一年の計は元旦にありと言いますが、終わりよければすべて良しとも言います。この一ヶ月どう過ごすのかで今年一年のとらえ方も変わってくるのではないでしょうか。今からでも遅くはありません。今できること一つを済ませ、その積み重ねで多くのことが成就できるでしょう。私はお正月に向け年末事務をコツコツとこなしていこうと思います。今年一年もまた過ごさせてもらいありがとうという気持ちで。

世の中で起こっている凶悪な事件や、アメリカ発と言われる経済不安などで、とってもそれどころではないという方々もいることでしょう。どうすれば事件がなくなりどうすれば景気が上向きになるのかわかったところではありませんが、それでも置かれた状況で今できることをやるしかないのでしょう。最善を一人一人尽くすことで一日を終え、一ヶ月を終え、一年を終えたからまた新たな年を迎えられたとの思いで、”元旦にあり”の希望につながれば幸いと思います。

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さて、般若心経も終わりに近づいてきました。

故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
般若波羅蜜多の教えは大いなる霊力を持った仏の言葉であり、一点の曇りもない鏡のような言葉であり、この上ない尊い言葉であり、ほかと比較するものがないほど優れた言葉であり、それは一切の苦しみを取り除くことができるという仏様の真実の言葉であるから嘘がないということになります。

人生は快楽的な生活をし続ける限り、苦が生じます。「一切皆苦」と言われます。世の中において思うようにならないという一切皆苦の真理に目覚めると、悠々自適の空の人生観にて生きることができます。西欧では幸せに至る考え方として「人生は思うようになる」とし、信念を持って努力すれば達成できるという考えです。「なさねばならぬ何事も」という精神ですが、それは物的満足に重きが置かれているとされています。一方仏教は幸せに至る考え方としては、走り続けることではなく、人生思うようにならぬと捉え、物的満足を否定し、我を主張せず煩悩を滅して心の安らぎに至ることを目標としています。何事にも思いを離れたところに安らぎがあるのです。