2013年4月法話
3月中旬より桜の便りがしきりにテレビで報じられています。もう春ですね。心配した雪も季節と共に消え、彼岸の墓参りも何とか出来てほっと一安心でした。本堂軒下の圧雪は未だ山となっており、4月中旬までは残るのではと思っています。春の便りとしては、3月下旬、渡り鳥が当地の小友沼を経由して帰るのですが、一日何万羽という白鳥、雁、かもが一斉に飛び出す瞬間は、想像を絶するほどの光景です。鳴き声といい、羽音といい、すさまじいものがあります。そんな渡り鳥ももう見ることが出来ません。秋にまた家族を増やして渡ってきてくれることでしょう。お涅槃会も無事に終わり、今度は私事ではありますがサツキの時節です。冬囲いから出し、数ヶ月ぶりに太陽の日差しの下で嬉しそうです。といいつつも昨年の植え替えで失敗してしまい元気のない木が数本あり、痛々しい限りですが、楽しみを継続させていきたいものと思っています。
当地では今が涅槃会のですが、4月はお釈迦様のお生まれになった月です。4月8日がその日で、花まつりと言われます。4月に入り、花々が咲き出し、その花で彩られた花御堂に「天上天下唯我独尊」の釈尊像が安置されます。地に花が咲くが如く、天からは甘露の雨も降り注ぎます。甘露を表す甘茶をお像にかけてあげて、釈尊誕生を喜びます。当寺では4月20日に梅花講の皆様と共に法要を執り行います。梅も桜も一緒に咲く当地、花まつりの頃には開いてくれるのでしょうか。誕生と開花と、一年で最も心のうきうきする時節を楽しみたいものです。
さて最初に書いた渡り鳥の白鳥にちなんだ書があります。“白鳥啣花”(白鳥花をふくむ)の語です。作品は44cm×34cmと小さいのですが、師は表具するに当たり、上下をだいぶ長くつけて大幅に仕上がっています。それもピンクの地で何とも春らしい作です。作品の墨も淡墨で穏やかさを加えております。
この4言は世阿弥が「幽玄の風姿」の象徴として「至花道」論に書き留めています。唐代の僧、牛頭山の法融禅師が石室に幽棲して修行中、百鳥(たくさんの鳥)が花をふくんで供養したという故事があり、後にこれが白鳥に変わったものと言われています。この清浄華麗な幻想が世阿弥の理想の、ひとつの典型に高められたとされています。
師はこの語が小さなコラムに載っていたのを書き留め、後に作品にしております。常に書を意識し、書物を読むに当たっても何か題材がないかと、そつのない勉強をしていたことが伺えます。