2013年3月法話

2月、28日しかない短い月ですが、何か長く感じられました。というのも、雪が毎日の様に降り、毎日の如く雪作務があるせいでしょうか。本年の冬は1日たりとも積雪を溶かしてくれる日がなく、5cm、10cmと足していくばかりでした。寒さも尋常ではなく、路面の氷は昨年末からのもの。寒明けは何となく三寒四温で春の兆しを感じるものなのですが、2月末に本年度最も強い寒波が襲い、一晩で40cm以上も積もってしまいました。庫裡はもとより本堂も屋根からの落雪で軒先に届かんばかりです。もう少し我慢すればと思いながら春を待つ身ですが、また寒気が来る、今日も雪除けという毎日に心がくじけてしまいそうです。それでも春は近くまでやってきているのです。苦労の後には春の癒しに笑いたいものです。先日、書展が有り上京した折りにはマスクの人が多く、友人に尋ねるともう花粉が飛んでいる為だという事でした。春は春で憂鬱な季節でもあるのですが、早く早く、待ち遠しいことです。

三月に入ると、お寺も何かと気忙しくなります。梅花講の再開、お彼岸・お涅槃会の準備。毎年の事ですがこの三月、寺内一丸で頑張って円成させねばなりません。彼岸会にはお墓参りをするのですが、本年は雪解けが間に合わないのではないかと懸念されます。何か手立てを考えなければと思っています。

さて、師の書に「得随」の小額が有ります。随には奥義、妙所との意が有りますが“随を得る”とは仏教的には“悟りを得る”という事になるのでしょうか。お釈迦様の、お祖師様の意を受けこのお寺に居させてもらうのですから、仏法の奥義も心得ていなければいけないことでしょう。この小額は師が開山堂の祖師像の向かい側に掛けています。師の作品の中ではごく初期のもので、本紙も少し色づいており時代がかっています。師も随を得ていたのか、得る様にしなければという思いなのか。ご開山堂に掲げた師の気持ちを思うに私も追随しなければと思い、戒めの様にもなっています。見づらい所ではありますが、皆様、師の意を得る為にも、是非観て頂きたい書です。師の得意とする隷書なのですが、初期の作で随分と堅い感じに仕上げられております。書の法でもここから随を得て多くの作を残せたことと思っております。