2014年10月法話

 秋盛りとなっています。当地では稲刈りも終盤となり、豊作実りの秋を迎えています。木々もすこしづつ色を付け初め、自然の移ろいを日に日に強く感じるこの頃です。

稲は豊作だった様ですが、お米の値が今年急に下落し、農家の方の作業意欲をそいでいるような気がします。お米が余れば値が下がるのは当然でしょうが、いい物を作ったら高く売って、肥料、農薬、機械にと思っていたのがあてにならず、赤字になってしまうくらいでは農家を続ける人がいなくなってしまいます。今まで農政に助けられていた日本のお米ですが、その農政が二転三転、言葉は踊っても農家にお金は降ってこない様な策ではいかがなものでしょうか。現代すべてをお金に換算して生活の柱にしている感じがしますが、それにしても自分が良かれと思い汗を流しての農作業が報われないとなれば、むなしさだけが残ってしまいます。お米だけではないでしょうが、お米の消費が必要な所への輸出等、活用出来るところは活用して、むくわれる社会にしてこそ心豊かな他人を思いやる生活が出来ることになるのではないでしょうか。

先日、亡き母の三回忌の法要を済ませる事が出来ました。本当に近い身内の方々に集まってもらっての事でしたが、年と共に兄弟の方々も病と出会い、出席が出来ない人もおられました。少し寂しさを感じずにはおられません。ご法事ともなればやはり亡き母の思い出が言葉に出さずとも皆心に思うことが多かろうと思います。一昨年の暑い秋彼岸での死。今は草茫々の畑を見事にこなしていた農作家の母。気の強い一歩も引かぬ言葉の数々、良いところ悪いところ皆、受け継いだ人のこれからの人生の糧になるのでなければと思います。

また法要後、親族と秘境といわれる田沢湖乳頭温泉・鶴の湯へ出かけました。岩手県境ともあって、駒ヶ岳を臨みながらの道中、紅葉の季節にまた来たいとの思いでした。宿はふんだんに木を使い、それも荒削りの風情を丸出しにして趣を出していて、都会の人にとってはなんと贅沢な!との思いだった様です。濃い硫黄泉に身をゆだね、テレビもラジオもない一晩でしたが何の苦もなく、暗くなったら身を横たえる事で、現代社会の過ごし方に一石を投じてくれたのではと思います。

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師の書に禅句一行幅が有ります。「衝破碧琉璃」の五文字臨済録中の一句。前後の文は略しても“龍の生んだ金色に輝く鳳凰のヒナは青い瑠璃の玉を突き破って生まれて来たところです”との文脈です。

龍と鳳凰で、それも青い瑠璃の玉からとさぞかし高見の社会の事の様ですが、禅ではそんな高い所を望むべきもなく、ただ今このまま坐ってお茶でも飲むことに真実を見ることを旨とします。華美な生活を打ち破ってこその美しさを求めるべく、師はこの五文字を飾り気のない至って文字を誇張せず余白を多く取ってまとめています。澄み切った線ですべてを切ってしまいそうです。


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