2009年2月法話

本年もあっという間に1ヶ月が過ぎてしまいました。一年の初めに当たり、皆様も大きなケジメは有ったのでしょうか。ケジメというより新たな一年の始まりと気を引き締める日常の繰り返しではありますが、誠心誠意努めていければと思っています。

新たな一年の始まりに世界でも大きな変化がありました。アメリカの大統領の交代です。オバマ新大統領、なかなか評判が良さそうで、全国民一丸となって政策 を推し進めようとしています。そして黒人初の大統領として何をしてくれるのだろうかとアメリカの人々の期待大のようです。今の世にあり、黒人であろうが白 人であろうが力のある人は認められ、それぞれの地位にあるわけで驚きもないのですが、メディアなどを通じて初めてだと大きく取り上げられると、差別がまだ あるのかなとうっすら感じてしまいます。

そんなものを吹き飛ばすほどのオバマ大統領の人気です が、政治の長たるもの人気だけではどうしようもないのは日本の政治をみていても分かることです。その時その時の状況を誤り無く把握し正しい施策をしなけれ ばなりません。しかしそんな世界変換を見透かしたように、中東でのイスラエルとパレスチナの戦争、大統領交代直前の終結、みんなアメリカの顔色をうかがう ような行動に驚いてしまいます。さてアメリカはどうするのか、力は力で制するのか、平和的解決を望まずにはおれません。

二月になるとすぐ寒別れがあり、節分の豆まきが行われます。「鬼は外 福は内」当寺でも2月3日午後5時より豆まきをしますが、当寺では「鬼は外 福は 内」と叫ばず、お経を読みながら豆をまきます。それは一切の災難を消し一切が吉祥ならんことを願う陀羅尼を誦すことで、迷いのない人となり、どんな不都合 なことでも一切をめでたいものとして受け止めて、喜びと腹の据わりを維持できるようにと、冬の寒さに耐え春の希望に満ちた時への船出としたいものです。豆 は鬼への武器ではなく、長い冬の食糧不足の栄養補給の如く自分への糧となるものと思います。どうぞ一緒に手を合わせ豆を拾い、食してみませんか。

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さて、陀羅尼で大乗仏教の菩薩道を示したすばらしい言葉で締めくくっている般若心経で す。最後には「この智慧と心髄の教えを終わります」とのことで経題をそえています。この経を貫く教えは、空観に目覚め空の世界に生きることです。自我を離 れ欲を離れ、無我という人生の実相を確視して慈悲の世界に生きることをいっております。とらわれのない心で生きていくことこそ安らぎを保つ方法であるので す。

坂村真民さんの詩に、花という詩があります。

何が一番いいか 花が一番いい
花のどこがいいか 信じて咲くのがいい

自分が置かれた場所を信じ、その場で精一杯咲き、花を咲かせ次の代の種をつけ散っていきます。宗教には、この信がなければ安心は得られません。信じさえす れば生死の縁もたやすく乗り切ることができます。信心あれば道を得ることができ、その教えを保てば悟りを得ることができるのです。世の中を信じ、人々を信 じ、自分を信じて幸せを実感できれば幸いです。この世は金持ちも貧乏人もなく、平等に空気も太陽も注がれます。どんな人も見捨てられることなく生かされて いる自分を知り、楽しい社会、楽しい仕事、すばらしい家族と喜び信じて生きてみましょう。